腸内に棲む主なバクテロイデスは40種類以上ですが、その中でも日本人の腸内に多いバクテロイデスは、
Bacteroides fragilis
Bacteroides thetaioatomicron
Bacteroides ovatus
Bacteroides uniformis
などです。
ここではバクテロイデスのなかでもよく知られており、研究も多くされているBacteroides fragilis(B.fra)についてお話します。
バクテロイデスはいいやつ?わるいやつ?
B.fraは大きくわけて、毒素を産生するものと毒素を産生しないものの2種類あります。
毒素を産生するB.fraは大腸癌を引き起こしますが、私たちの腸内にいるのはほとんどが毒素を産生しないB.fraです。
逆に、腸内のB.fraは免疫の面で宿主にいい影響を与えています。
免疫とは「非自己」を排除する働きです。
しかし、腸内にたくさんいる腸内細菌はまさしく「非自己」ですが、排除されずに共存しています。
なせでしょうか。
実は制御性T(Treg)細胞のおかげです。
Treg細胞は、自己や無害な異物に対して過剰な免疫を抑える働きを持ちます。
この細胞は全身の組織に存在していますが、特に腸にはたくさん存在しています。
Treg細胞がうまく働かないと自己免疫疾患などの免疫過剰によって引き起こされる病気になりやすくなります。
B.fraはPSAという多糖を産生します。
PSAはTreg細胞を活性化し、腸の免疫を正常に保ちます。
また、B.fraをはじめとするバクテロイデスは、大腸菌などと同じ細胞構成をしており、死んでバラバラになるとLPSという毒素を産生します。
しかし、毒素といっても大腸菌由来のLPSは血液中に数pg入るだけで宿主は発熱を起こしますが、バクテロイデス由来LPSは大腸菌由来LPSの1/100~1/1000の毒性しかもちません。
さらには、この毒性が少ないバクテロイデスLPSは、免疫細胞に働きかけることで毒性の強いLPSに対して耐性をもち、過剰な免疫を抑えます。
バクテロイデスが腸内にたくさんいる理由がわかった気がします。
肥満の方・自己免疫疾患の方・認知症の方は、腸内のバクテロイデスが少ない研究もされています。
お腹のバクテロイデスを減らさないように気をつけましょう。
では具体的にどうすればよいでしょうか。
バクテロイデスは食物繊維やオリゴ糖を餌とするので、日ごろから食べることを意識しましょう。
食物繊維は水溶性と不溶性の両方を摂取するとさらに効果的です。
水溶性食物繊維は、海藻、果物、野菜、根菜類などに多く含まれます。
不溶性食物繊維は、きのこ、豆類、乾物などに多いです。
オリゴ糖もたくさん種類がありますが、きちんと効果のある量が配合されているものを摂取することが大切です。