私たちのお腹の中には、私たちの細胞よりも多い数の細菌が棲(す)んでいます。
これらの腸内細菌は、私たちが食べた食物を栄養にして生きていますが、ただお腹で棲んでいるわけではなく、私たち宿主に影響を与えていることがわかってきています。
「便秘になると肌あれがひどくなる」
「緊張するとお腹が痛くなって下痢を起こす」
などと聞いて当てはまる方も多いのではないでしょうか。
実験でも興味深いデータがあります。
腸内細菌がいない無菌マウスに、肥満マウスの腸内細菌、健康なマウスの腸内細菌をそれぞれ移植すると、食事内容は変わらないのに肥満マウスの腸内細菌を移植したマウスのみ肥満になりました。
(Turnbaugh PJら Nature 21;444:1027-31.(2006)より論文内容を要約)
肥満は単純に摂取した食事内容によるものと思いがちですが、
腸内細菌自体が肥満を引き起こすきっかけにもなりうるのです。
宿主にまで影響を与える腸内細菌。
できるなら良い影響を受けたいと思いませんか。
ここでは腸内細菌の中で、宿主に良い影響を与えると言われている菌はどのようなものか、どのように良いのか、その菌を増やす方法をご紹介します。
下で示します乳酸菌の仲間ですが、乳酸菌とは違って空気があるところでは生きることができません。
乳糖やオリゴ糖が大好きで分解して乳酸と酢酸を産生します。
これらの酸が腸内を酸性にし、有害菌の増殖を抑えます。
日本人は他の国の人々と比べてビフィズス菌数は多いですが、腸内のビフィズス菌が一番多いのは母乳を飲んでいる赤ちゃんです。
赤ちゃんの腸内細菌の約90%はビフィズス菌が占めています。
これは、母乳中に含まれるヒトオリゴ糖や抗菌物質によりビフィズス菌が棲みやすい環境にあるからだと思われます。
乳酸菌
文字通り、糖を代謝して乳酸を産生する菌です。
ヨーグルトやチーズの製造にも利用されています。
生きている乳酸菌は乳酸を産生することで腸内の有害菌化を抑制しますが、死んだ菌であっても宿主に良い効果を及ぼします。
具体的には、抗アレルギー作用や血糖値低下作用、コレステロール低下作用などです。
バクテロイデス
バクテロイデスは腸内細菌において優勢菌の一つで、20%近くを占めています。
上の乳酸菌やビフィズス菌に比べて知名度は低いですが、バクテロイデスの多くはオリゴ糖を代謝することができ短鎖脂肪酸を産生します。
短鎖脂肪酸が多いと腸内が弱酸性になるため、有害菌が増えにくい状態になります。
マウスやヒトのデータでも、高脂肪な食事を続けて肥満になるとクロストリジウムなどのファーミキューテス門が増加し、バクテロイデス門が減ることが報告されています。
このことから、バクテロイデスは「やせ菌」とも言われたりします。
こちらのバクテロイデスについては別のコラムでもお話しようと思います。
sugoizochounaisaikin.hatenablog.com
では、これらの菌を増やすにはどうすればいいでしょうか。
ビフィズス菌やバクテロイデスはオリゴ糖を食べて増殖するので、オリゴ糖を食べることをおすすめします。
オリゴ糖はスーパーでも売られていますし、食品にも含まれる糖です。
バナナやタマネギ、ごぼうなどに多く含まれています。
オリゴ糖にもいろんな種類がありますが、特定保健用食品にもなっているフラクトオリゴ糖は安全性や効果の保証がされていて確実です。
☆ヨーグルト
ビフィズス菌と乳酸菌と言えばヨーグルトを思い浮かべる方も多いと思います。
ヨーグルトももちろん効果的な食べ物です。
しかし、ヨーグルトのように菌を食べる方法は食べている間しか腸内にいられないため、毎日食べ続ける必要があります。
最近ではいろんな種類の菌が使われているヨーグルトが販売されています。
数日食べてみてお腹の調子が良くなったと感じるものは、ご自分のお腹に合う菌の可能性が高いです。
☆発酵食品
乳酸菌は、漬物やキムチ、味噌といった発酵食品に含まれています。
塩分も多く含まれている食品なので食べ過ぎには注意ですが、
乳酸菌の代謝物まで摂取できるので、適量でいろんな種類を食べるといいと思います。
健康になりたいあなたはぜひ、腸に良いものを日々の食事に取り入れてみましょう。