sugoizochounaisaikinのブログ

管理栄養士と学術博士の資格を持ち、日々腸内細菌の研究をしています。腸内細菌に関することを書いています

体調不良は免疫の活性化が原因?

風邪をひくと寒気や関節の痛み、だるさといった体調が悪くなることは多くの人が体験しています。

でも2週間もすれば治って元気になるよね!

風邪が自然に治るのは身体に免疫があるからです。

免疫で一番活躍しているのが血液を流れる白血球です。

白血球は風邪ウイルスに感染した細胞を見つけると活性化し、まずウイルスを抑える活性蛋白を作り、その後抗体を作って風邪を治します。

 

白血球が最初に作る活性蛋白がインターフェロンです。

インターフェロンはウイルスが体内で増えるのを抑えますが、同時に、身体のだるさや発熱を引き起こします。

つまり、風邪で熱や体調不良が起きるのは、インターフェロンが風邪を治そうと活発に働いているからなのです。

いわば、インターフェロンの副作用とも言えます。

白血球は、外敵の種類に応じて、インターフェロンなど約40種の活性蛋白を作ります。

これらの活性蛋白は、総称してサイトカインと呼ばれています。

テレビ・新聞で、新型コロナウイルスの重症化はサイトカインストームが原因と報道されていました(COVID-19はサイトカインストーム症候群である | COVID-19有識者会議 (covid19-jma-medical-expert-meeting.jp))。

サイトカインが過剰に作られると危険なわけです。

新型コロナウイルスのサイトカインストームもディスバイオシスが基盤にあります。

 

免疫は細菌やウイルス、癌から私たちを守るためにかかせない働きである一方で、活発に働きすぎるといろいろ不都合なことが起こることがわかります。

このことから免疫は、しばしば両刃の剣にも例えられるそうだぞ。

名前はこわいけど実はいいやつ バクテロイデス



腸内に棲む主なバクテロイデスは40種類以上ですが、その中でも日本人の腸内に多いバクテロイデスは、

Bacteroides fragilis

Bacteroides thetaioatomicron

Bacteroides ovatus

Bacteroides uniformis

などです。

ここではバクテロイデスのなかでもよく知られており、研究も多くされているBacteroides fragilis(B.fra)についてお話します。

 

バクテロイデスはいいやつ?わるいやつ?

B.fraは大きくわけて、毒素を産生するものと毒素を産生しないものの2種類あります。

毒素を産生するB.fraは大腸癌を引き起こしますが、私たちの腸内にいるのはほとんどが毒素を産生しないB.fraです。

逆に、腸内のB.fraは免疫の面で宿主にいい影響を与えています。

 

免疫とは「非自己」を排除する働きです。

しかし、腸内にたくさんいる腸内細菌はまさしく「非自己」ですが、排除されずに共存しています。

なせでしょうか。

 

実は制御性T(Treg)細胞のおかげです。

Treg細胞は、自己や無害な異物に対して過剰な免疫を抑える働きを持ちます。

この細胞は全身の組織に存在していますが、特に腸にはたくさん存在しています。

Treg細胞がうまく働かないと自己免疫疾患などの免疫過剰によって引き起こされる病気になりやすくなります。

 

B.fraはPSAという多糖を産生します。

PSAはTreg細胞を活性化し、腸の免疫を正常に保ちます。

 

また、B.fraをはじめとするバクテロイデスは、大腸菌などと同じ細胞構成をしており、死んでバラバラになるとLPSという毒素を産生します。

しかし、毒素といっても大腸菌由来のLPSは血液中に数pg入るだけで宿主は発熱を起こしますが、バクテロイデス由来LPSは大腸菌由来LPSの1/100~1/1000の毒性しかもちません。

さらには、この毒性が少ないバクテロイデスLPSは、免疫細胞に働きかけることで毒性の強いLPSに対して耐性をもち、過剰な免疫を抑えます。

バクテロイデスが腸内にたくさんいる理由がわかった気がします。

 

肥満の方・自己免疫疾患の方・認知症の方は、腸内のバクテロイデスが少ない研究もされています。

お腹のバクテロイデスを減らさないように気をつけましょう。

 

では具体的にどうすればよいでしょうか。

バクテロイデスは食物繊維やオリゴ糖を餌とするので、日ごろから食べることを意識しましょう。

食物繊維は水溶性と不溶性の両方を摂取するとさらに効果的です。

水溶性食物繊維は、海藻、果物、野菜、根菜類などに多く含まれます。

不溶性食物繊維は、きのこ、豆類、乾物などに多いです。

オリゴ糖もたくさん種類がありますが、きちんと効果のある量が配合されているものを摂取することが大切です。

健康になりたいならここに気を配ろう。腸のこと。

 


私たちのお腹の中には、私たちの細胞よりも多い数の細菌が棲(す)んでいます。

これらの腸内細菌は、私たちが食べた食物を栄養にして生きていますが、ただお腹で棲んでいるわけではなく、私たち宿主に影響を与えていることがわかってきています。

「便秘になると肌あれがひどくなる」

「緊張するとお腹が痛くなって下痢を起こす」

などと聞いて当てはまる方も多いのではないでしょうか。

 

実験でも興味深いデータがあります。

腸内細菌がいない無菌マウスに、肥満マウスの腸内細菌、健康なマウスの腸内細菌をそれぞれ移植すると、食事内容は変わらないのに肥満マウスの腸内細菌を移植したマウスのみ肥満になりました。

Turnbaugh PJら Nature 21;444:1027-31.(2006)より論文内容を要約)

肥満は単純に摂取した食事内容によるものと思いがちですが、

腸内細菌自体が肥満を引き起こすきっかけにもなりうるのです。

 

宿主にまで影響を与える腸内細菌。

できるなら良い影響を受けたいと思いませんか。

ここでは腸内細菌の中で、宿主に良い影響を与えると言われている菌はどのようなものか、どのように良いのか、その菌を増やす方法をご紹介します。

 

ビフィズス菌

下で示します乳酸菌の仲間ですが、乳酸菌とは違って空気があるところでは生きることができません。

乳糖やオリゴ糖が大好きで分解して乳酸と酢酸を産生します。

これらの酸が腸内を酸性にし、有害菌の増殖を抑えます。

日本人は他の国の人々と比べてビフィズス菌数は多いですが、腸内のビフィズス菌が一番多いのは母乳を飲んでいる赤ちゃんです。

赤ちゃんの腸内細菌の約90%はビフィズス菌が占めています。

これは、母乳中に含まれるヒトオリゴ糖や抗菌物質によりビフィズス菌が棲みやすい環境にあるからだと思われます。

 

乳酸菌

文字通り、糖を代謝して乳酸を産生する菌です。

ヨーグルトやチーズの製造にも利用されています。

生きている乳酸菌は乳酸を産生することで腸内の有害菌化を抑制しますが、死んだ菌であっても宿主に良い効果を及ぼします。

具体的には、抗アレルギー作用や血糖値低下作用、コレステロール低下作用などです。

 

バクテロイデス

バクテロイデスは腸内細菌において優勢菌の一つで、20%近くを占めています。

上の乳酸菌やビフィズス菌に比べて知名度は低いですが、バクテロイデスの多くはオリゴ糖代謝することができ短鎖脂肪酸を産生します。

短鎖脂肪酸が多いと腸内が弱酸性になるため、有害菌が増えにくい状態になります。

マウスやヒトのデータでも、高脂肪な食事を続けて肥満になるとクロストリジウムなどのファーミキューテス門が増加し、バクテロイデス門が減ることが報告されています。

このことから、バクテロイデスは「やせ菌」とも言われたりします。

こちらのバクテロイデスについては別のコラムでもお話しようと思います。

 

sugoizochounaisaikin.hatenablog.com

 

では、これらの菌を増やすにはどうすればいいでしょうか。

オリゴ糖

ビフィズス菌やバクテロイデスはオリゴ糖を食べて増殖するので、オリゴ糖を食べることをおすすめします。

オリゴ糖はスーパーでも売られていますし、食品にも含まれる糖です。

バナナやタマネギ、ごぼうなどに多く含まれています。

オリゴ糖にもいろんな種類がありますが、特定保健用食品にもなっているフラクオリゴ糖は安全性や効果の保証がされていて確実です。

☆ヨーグルト

ビフィズス菌と乳酸菌と言えばヨーグルトを思い浮かべる方も多いと思います。

ヨーグルトももちろん効果的な食べ物です。

しかし、ヨーグルトのように菌を食べる方法は食べている間しか腸内にいられないため、毎日食べ続ける必要があります。

最近ではいろんな種類の菌が使われているヨーグルトが販売されています。

数日食べてみてお腹の調子が良くなったと感じるものは、ご自分のお腹に合う菌の可能性が高いです。

 

☆発酵食品

乳酸菌は、漬物やキムチ、味噌といった発酵食品に含まれています。

塩分も多く含まれている食品なので食べ過ぎには注意ですが、

乳酸菌の代謝物まで摂取できるので、適量でいろんな種類を食べるといいと思います。

健康になりたいあなたはぜひ、腸に良いものを日々の食事に取り入れてみましょう。